目次
ここではそんなシニア期に向けたドッグフードの選び方や与え方を中心に、おすすめのシニア犬用ドッグフードを紹介したいと思います。
シニア向け・高齢犬用ドッグフードにした方がいい?
犬のシニアは何歳から始まる?
小型犬では8歳、中型犬で7歳、大型犬では5~6歳から徐々に老化が始まります。
高齢になると内臓(消化器、呼吸器、泌尿器、内分泌器)機能が低下します。また、長年の関節への負担による関節疾患や、遺伝性の病気の発症などのリスクも高くなります。
また、嗅覚や味覚などの感覚器官も衰え始めるので食欲の低下や病気の兆候に気付きにくくなる傾向があります。
犬の年齢や疾患に応じて検討する
シニア期に入ったからといってすぐに食事を変更する必要はありません。シニア犬用のドッグフードでなくても、高齢犬に適したフードに合致していれば十分に健康を保てます。
ただし、愛犬に肥満や関節疾患、心・腎・肝疾患、代謝異常などの兆候が見られた場合は、獣医師と相談の上、食事の変更が必要になる場合があります。
他にも、愛犬の食欲や年齢、生活リズム、運動量、目に見える体の変化、健康診断結果など必要に応じてドッグフードの見直しを検討しましょう。
シニア犬用のドッグフードの選び方
- 消化のいい良質なタンパク質(20~30%)
- 中高齢期は脂質やカロリー控えめ
- 高齢期は高脂肪・高カロリー食へ
- カルシウム・リン・マグネシウム・ナトリウム量にこだわる
- 機能性原材料にも注目
- 療法食は獣医師の指示で与える
消化のいい良質なタンパク質を20~30%弱
高齢犬は内蔵機能の低下によって、成犬の時よりも活発に消化や吸収が行えないので、シニア犬用ドッグフードは、消化しやすい良質なタンパク質で15~23%(ドライフード)程度が適切と考えられています。※成犬・シニア用総合栄養食のタンパク質の最低基準は18%以上
アミノ酸バランスが整った卵や鶏肉などは、効率良く犬の体に吸収されるので、余分なアミノ酸を排泄する腎臓への負担も少なくできます。
ただ、健康なシニア犬でタンパク制限をし過ぎると、食欲低下や体力低下を招くので、運動量の低下や肥満等が見られてから始めても遅くはありません。
脂質やカロリーは控えめ
中高齢期になると、運動量の低下とともに消費カロリーが徐々に減少します。これまで通りの食事量を続けると肥満になってしまうので、徐々に摂取カロリーを控えていく必要があります。
高齢犬のDERは初期推奨量として【1.4×RER】が推奨されています。体重とBCS(ボディコンディションスコア)の増加傾向を観察しながら、調整を行います。
脂質は体内に脂肪として蓄積されやすいので、シニア犬のドッグフードでは控えるのが一般的です。シニア犬のドッグフードの脂質量は一般的に7~15%(ドライフード)の脂肪レベルが推奨されています。
超高齢期は逆に高脂肪・高カロリー食を
超高齢期になると、必要な給餌を摂取できず、体重が減少する場合があるので、少量摂取でも十分なカロリーが摂取できる高カロリー密度の食事へ切り替えます。
また、脂質には、抗炎症作用や記憶力改善、抗ガン作用、関節痛の軽減など様々な効果が期待できるオメガ3(DHA・EPA)が豊富に含まれています。脂質を控えると、それらの必須脂肪酸も少なくなってしまうので、犬の肥満度合いや運動量、必須脂肪酸量も考慮しながらドッグフードを選びましょう。
カルシウム、リン、マグネシウム、ナトリウムなどの量やバランス
高齢犬になると腎臓病や尿路疾患などミネラルに関する疾患が増えてくるので、ミネラルのバランスに配慮したドッグフードがおすすめです。
AAFCOのドッグフードの栄養基準ではカルシウム(Ca):リン(P)の比率は、1:1~2:1されていますが、適正な犬のカルシウムとリンの比率は【1.2:1~1.4:1】と考えられています。
また、マグネシウム値は19~35mg/100kcalが適正と考えられています。マグネシウム値が高いとシュウ酸カルシウム結石になりやすく、反対に低いとストルバイト結石になりやすくなります。
グルコサミンやコンドロイチン、乳酸菌などの機能性原材料
- グルコサミン
- コンドロイチン硫酸
- 乳酸菌(エントロコッカス・ビフィズス菌など)
- オリゴ糖
- 魚油(サーモンオイルなども)
関節に配慮したグルコサミンやコンドロイチン、腸内環境に配慮した乳酸菌やオリゴ糖、記憶力や痴呆への対策としてオメガ3脂肪酸が豊富な魚油など、シニア犬にとって嬉しい効果のある原材料は積極的に取り入れていきましょう。
療法食は獣医師の指示で与える
療法食は特定の病気や疾患に特化した栄養設計ですが、健康な犬に与えると、栄養に偏りが生じ、栄養不足を生じたり、他の病気を発症する可能性があります。自分の判断で与えず、療法食は必ず獣医師や動物病院の指示のもと、与えるようにしてください。
シニア(高齢)犬におすすめのドッグフードTOP3【総合栄養食】
SOLVIDA シニア(室内飼育7歳以上用)
対象年齢 | 7歳以上 |
内容量 | 900g、1.8kg、3.6kg、5.8kg |
価格(1kgあたり) | 2,420円 |
カロリー | 330kcal/100g |
主原料 | オーガニックチキン生肉 |
タンパク質量 | 23%以上 |
脂質量 | 10%以上 |
カルシウム | - |
リン | 0.3% |
マグネシウム | - |
オメガ6:オメガ3 | 2.0%以上:3.0%以上 |
合成保存料・合成酸化防止剤 | 不使用 |
室内飼育の7歳以上シニア向けソルビダドッグフードは、オーガニックのチキン生肉を使用した高品質なレシピとなっています。
グレインフリー(穀物不使用)ですが、脂質・低カロリーレシピで、タンパク質も多すぎず少なすぎない中程度の量です。
原材料には腸内環境を助けるプロバイオティクス(乳酸菌、イースト菌、麹菌など)や、善玉菌のエサとなって働きを助けるイヌリンやフラクトオリゴ糖、ビール酵母などが配合されています。腸内環境を整えることで免疫の維持にもつながるので、免疫力が低下する高齢犬には特に嬉しい原材料です。
ウィリアムドッグフード(全年齢対応)
対象年齢 | 全年齢対応 |
内容量 | 1.8kg お試し200g |
価格(1kgあたり) | 2,365円 |
カロリー | 約397.8kcal/100g |
主原料 | 肉類(脱水鶏肉 24%、鶏生肉 20%、鶏脂 9%、鶏タンパク質 5%) |
タンパク質量 | 26.5% |
脂質量 | 19% |
カルシウム | 1.2% |
リン | 1.0% |
マグネシウム | 0.07% |
オメガ6:オメガ3 | 2.0%:0.3% |
合成保存料・人工酸化防止剤 | 不使用 |
ウィリアムドッグフードは全年齢対応なのでシニア向けではありませんが、食いつきの評価が高く成分バランスも整っているので、シニア向けとして申し分ありません。
食欲が落ちてきた高齢犬におすすめで、脂質は19%と高めですが、だからこそ体重が落ちてきたシニア犬が少量の給与でも沢山の栄養やエネルギーが摂取できます。
さらに消化のいい脱水鶏肉と生肉を使用し、乾燥肉は不使用。オメガ6とオメガ3のバランスや、カルシウム・リン・マグネシウムのバランスなども明記し比率にも適正に調整されているので、シニアでかかりやすい病気に配慮したフードをお探しの方にもおすすめです。
ナチュラルバランス リデュースカロリー(シニア)
対象年齢 | 中高齢犬向け |
内容量 | 1kg、2.27kg、5.45kg |
価格(1kgあたり) | 1,453.7円 |
カロリー | 338kcal/100g |
主原料 | チキン |
タンパク質量 | 25%以上 |
脂質量 | 12%以上 |
カルシウム | 0.9% |
リン | 0.8% |
マグネシウム | - |
オメガ6:オメガ3 | 1.5%以上:0.3%以上 |
合成保存料・合成酸化防止剤 | 不使用 |
ナチュラルバランスのリデュースカロリーは、運動量が低下したシニア向けに開発されたドッグフードで、体重管理と肥満予防に特化しています。
また、大容量サイズもあるのでコスパも良く、中型犬や大型犬におすすめです。クエン酸やクランベリーなどの尿pH値を調整する原材料も配合されています。
メンハーデン魚オイルでオメガ3脂肪酸も含有し、オメガ6とオメガ6のバランスも適正比率の5:1に設計されています。
シニア犬へのドッグフードの給与方法と食べない時の対処方法
7~14日かけてゆっくり切り替える
シニア犬のドッグフードを切り替える時は、前のフードに新しいフードを少しずつ混ぜながら7~14日ほどかけてゆっくりと切り替えます。
消化器官が衰えて機能が低下しているので、成犬の時よりも切り替え時に消化不良による嘔吐や下痢を起こしやすくなります。
切り替えた後も、与える量は少量ずつで、回数を3回くらいに分けて与えると消化の時間を十分にとれるので、体調を崩しにくくなります。
ウェットフードと一緒に与える
飲水量が少なくなった犬に水分を多く摂取させるには、ウェットフードと一緒に与えるのが効果的です。
ウェットフードと一緒に与えることでドライフードの食欲増進にもつながるので、愛犬がドッグフードを食べてくれない時の対処方法としても有効です。
併用することで、栄養と水分の両方を効率よく摂取できます。
食べにくい場合は、砕いたりふやかして与える
シニアになると歯肉炎、歯周病などの口腔トラブルで固いドライフードが食べられなくない場合があります。
粒の大きさや硬さが原因で犬の食欲が落ちてしまうこともあるので、そういう時はぬるめのお湯でふやかして与えたり、小さく砕いて与えると、高齢の犬でも食べやすいのでおすすめです。
シニア犬が積極的に摂取したい栄養素
シニア犬に良質なタンパク質が必要な理由
高齢犬の体内でタンパク質の分解・合成機能が低下すると、十分なタンパク質(アミノ酸)が得られず、新しい細胞や体をつくるための材料が足りない状態になる傾向があるので、シニア犬には良質なタンパク質を与えることが大切です。
良質なタンパク質とは、犬の必須アミノ酸がバランス良く含まれる消化の良いタンパク質で、一般的に「アミノ酸スコアの高い食材」を指していいます。
アミノ酸のバランスが悪いと、うまく利用されず排泄分が多くなり腎臓に負担が大きくなるので、良質なタンパク質を必要な分摂取することで、腎臓に負担をかけずに効率良くタンパク質を利用できます。
超高齢のシニア犬には高脂肪がすすめられる理由
健康な高齢犬は、肥満防止のために脂質(脂肪)を制限した方がいいとされています。ただ、食欲が低下し体重減少が見られるようになった場合は、反対に、高脂肪なもので嗜好性の高い食事を与えることがすすめられます。
低脂肪の商品は、嗜好性の低いフードも多く、犬の食いつきに影響することがあります。また、食べなくなってしまうと、栄養失調により免疫力の低下をはじめ、体に様々な不調をきたします。
人を対象にした研究ですが、食物中のエネルギー密度を高めると高齢者の健康状態が改善したという研究報告があります。また、適切なエネルギー摂取は、タンパク・エネルギー栄養不調による免疫機能の低下を防止できることも示されています。
また、シニアになると癌の発症も多くなりますが、タンパク質や脂質、炭水化物の中で、癌細胞に利用されにくいのは脂質です。このため、癌を患っている犬は脂質からエネルギーをとるのがいいとされています。
このことから、高齢犬は肥満を防止しつつも、十分なカロリーを摂取が必要です。
シニア犬に脂質のオメガ3(DHA・EPA)が重要と言われる理由
今現在が元気な状態でも、関節が少しでも痛めば犬の運動量は徐々に低下しますし、痴呆によって食事を食べ過ぎたり、無駄吠えなどの問題行動で飼い主さんが愛犬の健康を気にしているどころではなくなってしまう場合もあります。
オメガ3脂肪酸は関節疾患や学習能力・記憶力の改善、炎症抑制、生活習慣病の改善など、高齢犬にとって嬉しい効果をたくさん持っていることから、高齢期では特に摂取したいと考えられている栄養素です。
オメガ3脂肪酸を多く含む魚油を骨関節炎の犬に与えたところ、日常生活の活動のパフォーマンスが向上したり、非ステロイド性抗炎症薬の投与量が減少するなどが報告されています。
炎症を緩和する効果が知られるオメガ3脂肪酸は癌の化学療法でも用いられ、抗がん剤と共に与えると寿命が延長されることが示されています。また、腎臓病の犬においても他の栄養成分と組み合わせることで寿命が延長しています。この研究では、必須脂肪酸と代謝改善効果のあるα-リポ酸を組み合わせることで高齢期の認知機能不全を改善させることも示されました。
食物繊維を多めに摂取した方がいい理由
繊維質は腸管を刺激して高齢犬に起こりやすい便秘症状を改善するので、摂取量は増加させた方がいいと考えられています。
また、高繊維食はカロリーを希釈するので肥満傾向の犬に適しています。さらに繊維が多いことで糖尿病の食後の高血糖の緩和にも役立ちます。一部の肥満防止用の総合栄養食や特別療法食も高繊維が特徴となっています。
シニア犬に十分な水分摂取が必要な理由
シニアになると感覚器が鈍感になります。運動量も低下するので、分かりやすく水を飲みたいという欲求が現れにくくなります。また関節疾患などが出てくると水を飲むために立ち上がることも積極的ではなくなるので、水分摂取量は少なくなる傾向があります。
しかし高齢になると慢性腎臓病の兆候(尿濃縮能低下)が出てきたり、心臓病治療で利尿剤を使う場合があることから、より水分摂取が重要になるので、シニア期の食事では水分含有率の高い食事や、水分摂取を促すような食事であることが大切です。
また、基本的に犬は水分含有率の高いものを好む傾向があります。食欲増進のためにも水分が摂取できる食事にすることで、犬の満足度も高めることができます。
シニア犬が制限したい成分
シニア犬にカロリー制限が必要な理由
高齢になると、内臓機能や消化機能が低下します。また、動きがゆっくりになり非活動的になるので、体脂肪や皮下脂肪が増加する傾向があります。筋肉減少によって基礎代謝が低下します。このため、1日に必要なエネルギー量は、維持期(成犬期)と比較すると約20%も低下します。
しかし高齢期の犬でも食欲そのものはすぐには落ちません。このため活動量や筋肉量が低下しても、維持期と同じ食事を与えていていると、カロリーオーバーで肥満や内臓への負担のリスクが増加するので摂取カロリーを制限する必要があります。
シニア犬がタンパク質を過剰摂取してはいけない理由
中高齢の犬では良質なタンパク質が必要な一方で、腎臓病の有病率が高まるため、タンパク質の過剰摂取にならないように注意しなければなりません。
ただ、超高齢犬ではタンパク質の吸収や合成能、代謝回転率が極端に低下しているので、タンパク質の増加が必要な場合もあります。また、タンパク質が不足すると、免疫力の低下も引き起こすことから、がんや感染症などの疾患、あるいは怪我をした場合の回復に時間がかかるなどの悪影響が出てしまうので、獣医師の指示に従い、自身の判断で極端なタンパク制限はしないようにしましょう。
シニア犬の食事でリンを制限する理由
高齢になると犬は腎臓病の罹患率がより高くなってきます。食事中に過剰なリンが含まれると、慢性腎臓病が進行しやすくなるため、リンが豊富な肉は避けられる傾向があります。
リンの摂取を制限すると腎臓病を遅らせるので、生活の質も向上することから、過剰なリンの摂取は避けた方がいいとされています。腎臓病の犬にリンを制限をした特別療法食を与えると、臨床徴候の軽減や進行遅延が見られ、生存期間も延長するなどの効果があることが分かっています。
リンの食事量は0.25~0.75%DMが推奨されます。ただ一方でリンは犬にとって旨味なので、リンを制限した療法食は、犬に嗜好性が低下する傾向があります。
ナトリウム(食塩)を制限する理由
高齢犬ではナトリウム量や食塩相当量は控えることが大切です。
健康な高齢犬のナトリウム必要量は、通常の成犬と同じくらいと考えられていますが、食塩の含有量が多いドッグフードは、心疾患や腎臓病の罹患率が高い高齢犬には与えない方がいいとされています。
若い健康な犬ならナトリウムをある程度過剰に摂取しても排泄できますが、高齢犬はナトリウムの過剰摂取に対する調節能力が低下しているため、高血圧性疾患に罹患している犬では有害となります。
まとめ
ですが、なるべく元気に、健康な状態で生涯を楽しんでもらうために、普段の食事から工夫や見直しをしていきましょう。